Random Talk #001

「石井隆監督との出会い」

  鈴木 隆之の場合

石井監督との出逢い。

それはちょうど30年前になります映画『ヌードの夜』(1993) なのですが準備期間の記憶は飛んでます。
どこからか怖い、堅い厳しい監督と聞いてまともに眼を見れなかったのかもしれません。(ホントは超優しい)
初めて眼が合った瞬間=それは名美が行方を刺すシーン。美術小道具担当だった僕は血糊をたっぷり入れた3つの仕掛け用ポンプを抱え、綿密にテストで動きを固め、とうとう後戻り出来ないNGなど絶対に認められない長回しワンカットの本番を迎えた。

耳を劈く監督の渾身の
"よーい、、、、はいっっ!!"

ひとつ目の仕掛け・何間かあった後、流れ出続ける濃血。上手く行っているか狭い為に確認出来ない角度にいる僕にとって次のアクションに移るか、瞬間迷い監督を見た。
監督が僕を見ている。
見開いている。
次の瞬間、テレパシーかと思うくらいに脳に言葉が伝わってきた。
『上手いぞ! 次の仕掛けも思いっきり行け!』

必死に名美のアクションとリンクするように大量鮮血を名美にかけ続けた。夢中になりすぎて気絶してた? コレはゾーンというものなのか。(この後も何度か奇跡のような事が監督との間には起こる事となる。)

なんか終わったようだ。
興奮冷めやらぬ血だらけの現場で正気を取り戻しつつふと見上げると
充実した優しい眼をこちらに向けている石井隆監督がいた。
ここから石井隆監督作品の
血糊担当(美術も)として地獄巡りのお供となりました。

とか。


Written by 鈴木 隆之  プロフィール