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石井:成田さんが何年もかかって会社(※日活)を説得してくれたっていうので、その感謝でいっぱいでした。
『ラブホテル』でご一緒させて戴いて以来、飲み友達だった相米(慎二)さんも喜んでくれて。
成田:石井さんには助監督の経験もないし。劇画描いているっていうけど、大丈夫なのかっていうね。
異業種監督っていう言葉もないころだから。
石井:途中で1回挫折しちゃって、現場から弾き出されちゃったんです。スタッフとの関係は本当に辛かった。
助手の頃からあちこちの現場で辛い思いしながら一緒にやって、それでお互い監督とか技師になって、というのが普通ですからね。どうしてこんなぽっと出の奴に撮らせるんだって、スタッフみんなが思うのはよく分かりますよ。
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成田:当時はこの面倒くさい監督とやっと終わったと思ってましたね(笑)。そっちの解放感のほうが強かった。
もう2度とやらない!って。いつも思いますけど、もう2度とやらないって。
石井:強調しますな(笑)。
成田:まぁ、石井さんにそういうと、作品でスタッフに返すんだっていう言い方をするんですけどね。
実際にその通りです。
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石井:正直いうと、僕は成田さんから声がかかるまでロマンポルノは見た事がなかったんです。ポルノという事で本名を出さないスタッフや辞めていった人が結構いたと聞いているし、気持ちは分かるんですが、自分が描いていた劇画の世界と重なっていたものですから。
コミックは基本、子供が読む媒体ですから女と男をがっつり描くと〝エロ〟〝ポルノ〟と差別される。だから、実名を隠しながら撮ったものなんて僕は見ないぞと。でも実際には堂々と傑作を撮られた監督たちが何人もいたわけですから、僕の「見ない」は後から考えれば間違ってましたね。
石井:(『赤い眩暈』で初監督が出来ることとなり、)監督となると、もう、念願でしたから全てを賭けようと、劇画を辞めて退路を絶った。それだけの決心はしたんですが、『赤い眩暈』は全然評価されなかった(苦笑)。
でも今回リリースされる『天使のはらわた』4本のうち、3本は名作です。それで盛り上げてください(笑)。